最高裁判所第三小法廷 昭和40年(あ)137号 決定 1966年6月10日
主文
本件各上告を棄却する。
理由
弁護人九名―<省略>の上告趣意第一点ないし第五点は、判例違反をいうが、所論引用の判例中2は、地方裁判所の判決であつて、刑訴法四〇五条二号、三号所定の判例に該当せず、その余の判例は、すべて本件に不適切であるから、前提を欠き、同第五点中違憲(二八条)をいう点は、実質は行為の正当性を主張する単なる法令違反の主張に帰するものであり(原判決は、所論のように、使用者の庁舎管理権のみを根拠として、本件ビラ貼り行為の正当性を否定したものでないことは、判文上明らかである。)、さらに、同第三点、第四点中右ビラ貼り行為は、刑法二六〇条の建造物損壊ということはできないとする点は、事実誤認ないし単なる法令違反の主張であつて、いずれも刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。(日本電信電話公社職員をもつて構成する全国電気通信労働組合東海地方本部副執行委員長等の地位にある被告人らが、多数の者と共謀の上、斗争手段として、当局に対する要求事項を記載した原判示ビラを、建造物またはその構成部分たる同公社東海電気通信局庁舎の壁、窓ガラス戸、ガラス扉、シヤツター等に、三回にわたり糊で貼付した所為は、ビラの枚数が一回に約四、五百枚ないし約二五〇〇枚という多数であり、貼付方法が同一場所一面に数枚、数十枚または数百枚を密接集中させて貼付したこと等原審の認定した事実関係のもとにおいては、右建造物の効用を減損するものと認められるから、刑法二六〇条にいう建造物の損壊に該当するとした原審の判断は、正当である。)
また、記録を調べても、本件について刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。(田中二郎 五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六 下村三郎)